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猛獣使いと冷めた珈琲

■ 第1章 ■



黄色いイチョウの葉が辺りを敷き詰め

一面を黄金色に輝かせている12月初旬早朝

大手精密機械の営業同期だった3人は

5年ぶりに出勤前によく当時通っていた

CAFEにモーニングでも...という話になり集ったのだった。

一番初めに着いたのがガッチリした体系の岡田太一。

グレー三つ揃えのスーツにベージュのツイードのコート

ポールスミスのカラフルなストライプのマフラーを巻いて

現在は既に営業一課の課長補佐になっている。

そこへカスタムした黒のビアンキに跨り

細身の体に黒縁眼鏡、黒のNOTHFACEダッフルを背負った

技術一課へ移動し2年前から整備士になった

田中剛がタイミングよく到着した。

「よっ!久しぶり!」

大きな顔の横にずんぐりとした手をあげ太一が挨拶する。

「よ~!課長久しぶりだな、相変わらずお前派手だな~」

笑いながらガードレールにマットな黒のビアンキを

慣れた手つきで固定する田中。

「いやいや、課長補佐だよ、まだまだ道のりは長いよ。」

「あれ、戸田はまだ?」

「あぁ、なんかロンドン支社との朝の合同ミーティングが長引いてる

から10分くらい遅れるってさっきメールきたぞ。」

「あいつも外資系の会社に転職して今マネージャーだろ?

 めちゃくちゃ出世コースだよなぁ~。

 でも努力家だったよな。通勤前に英会話スクール行ってたし。」

「ああ....お前だって、この前整備士免許取ったんだろ?

 営業からの転進でよくやってるよ、まったく。

 お前だってすごい頑張ってんじゃんか。」

「いやいや、そういうのが好きなだけだから...」

太一はローストビーフサンドにアメリカンのセット

田中はチーズドックとアップルパイに

ロイヤルミルクティーを頼み席についた。

「この席懐かしいな。」

「ああ、5年前とちっとも変わらないな。」

ブラックコーヒーからは熱い湯気が立ち上っている。

「そのアップルパイとロイヤルミルクティーも健在なのな(笑)」

「朝、甘いもん食べたくなんのよぉ。」

と言って、早速アップルパイのフィルムをくるくるとフォークで

器用にはがし皿の下に素早く差し込む。

「.....I think so, and see you later bay!」

自動ドアを颯爽とくぐり抜け、片手を挙げながら最後に到着した

黒のロングコート姿の戸田悠司が皮の手袋を外しながら席に近づいてきた。

「やー、ごめんごめん、遅れちゃって。

おー懐かしのアップル&ミルクティー(笑)」

「戸田にまで突っ込まれたか。ここのが旨いんだよねーやっぱし。

 お前もなにか食べれば?」

「おー...でも腹減ってないからブラックでいいや、俺は。」

久しぶりの再開だが、誰一人としてそんな事はみじんも感じていなかった。

「あ、何何、彼女んちで食ってきたとか?」

「 いやぁ~彼女つくる暇ないよーまったく。

 今はロンドン支社との合同プロジェクトが大詰めでさ、毎日もー

 寝る暇もないもの。ムリムリ。」

顔の前で手を振る戸田は細いきれいな指をしていた。

「あれ、ミキちゃんとはどうなったの?」

「んー自然消滅....連絡来なくなった。」

「忙しいものな、仕方ないか....。」

「そういう田中はどうなのよ。噂の彼女とは。」

「え?まぁ、、、ボチボチでんな~」

「なんだよ、それ!どうせうまくいってんだろ?

 そーれーよーりー 」

田中と戸田が示し合わせたように顔を見合わせて

太一の方に向き直りほぼ同時にこう言った。

「太一はその後、真純とはどうなったのよ。

 つか、なんで結婚式よばねーの!!!」

言われるだろうな、と覚悟していた太一は笑いながら言った。

「あはは、ごめんごめん。

 親族とごくごく親しい友人とで執り行ったからさ。

 お前ら丁度試験やら、ヘッドハンティングやらで

 忙しかったろ?だから、呼べなかったんだよ。

 すまん、すまん。」

鷺野真純とも同期だった3人は互いに刺激し会えるよい仲間だった。

「いやね、真純が結婚できたことにまず俺はビックリしたよね。

 俺は、、、一番結婚から縁遠いタイプだって思ってたから

 お前と結婚するって聞いてビックリしたぞ。」

と田中が口の端で笑いながら上目遣いに見上げ言った。

「まー、確かに怒るとあいつめちゃくちゃ怖かったしな.....

他部署の連中から太一、おまえ”猛獣使い”っていうありがたくない

名称まで頂いちゃってるようだしなぁ。

なんでかな、真純おまえにだけはというか、怒ってる真純が

お前と話をすると静かになるっていう神話が社に行き渡ってたもんな。

そんな、真純も1児の母か~ 」

ブラックコーヒーを両手で包み思い出すように戸田がため息をつく。

「”猛獣使い”?ひでぇな、それは(笑)

 真純はごく普通だと俺は思ってるよ。別に怖かないよ。

 あいつはまっとうな事にしか怒んないしな。

 なんていうか、、、らしくないときに怒るんだよ、彼女は。」

「らしくない?というと.....」

遮るように、田中が口を挟む。

「んー....例えば、俺がやりたくない仕事を面子とか付き合いとかで

引き受けるとするじゃん?そうすると猛烈に怒るわけ。

”そういう仕事はうまくいきっこないし、力入んないでしょう?”ってさ。

 まー昔は、それでも反発して引き受けてたわけだけど

 確かに彼女の言うとおり、途中でボツッたり、問題が次から次へと

 発生して責任を問われたり、上司にしこたま不条理な理由で怒られたり

 ま...彼女の言うとおりになったわけ。だから、彼女が”いいんじゃない?”

 っていう言葉がもらえるような仕事を選ぶようになったわけ。」

「はー...それでメキメキ課長補佐になったってわけか。 恐妻家ってヤツか。

あれ、そういえば田中も真純が押したおかげで

技術系の部署に移動したんじゃなかったっけ?」

藤色のタイを手で直しながら戸田が田中に質問した。

「そうそう。真純が複合機壊した事件あったよな?」

「あったあった。ああ、あれな。」

「別に壊したわけでもなくって機械のある部品がいかれてただけなんだよ。

 で、互いに残業中でメカニック呼ぶにも時間が時間だったから

 俺が代用品でどうにかしたってわけ。

 そしたら、”すごいじゃん、すごいじゃん、田中くん技術一課にいけるよ!”

 って目を輝かせながら言うもんだからついつい俺もその気になっちゃって(笑)

課長にもすごいプッシュしてくれたらしくてさ、お陰で今の俺がここにいる(笑)」

「確かに、怒ると怖いけど褒めるときもキラキラして本気で褒める子だったよな。

なんつーか裏表のないいいやつだったよな。

だからかね、太一と1、2争う営業成績だったろ?真純も。

結婚して辞めたのもったいなかったよな~課長も嘆いてたろ?」

「だな、、、でも真純とってはこれでよかったのかもしれない。

裏表のない性格って結構大変だからさ。女だし、キツイこと沢山あったらしいよ。

毎日泣いてたもん、最後の方なんて。」

「まじで?あいつ泣く事あるの??」

田中と戸田が同時に驚きを隠せない声で叫び、

店内が一斉に彼らの方を見た。

田中は愛想笑いで頭を下げ、戸田は体を小さくした。

「泣くの?あの真純が。」

「泣くでしょそりゃ、女だし。」

「そっかぁ....まぁ分かる気もするな。

あ、太一娘の写真ないのかよ。どっち似?

お前似だったら不幸だな(笑)」

目を見開き冗談交じりに戸田が言った。

「あ!それシツレー!あるよ、ちょっと待って。」

営業用のipadを取り出して、フォトアルバムを開く。

「おお!真純似じゃん~。真純結構キレイだったもんな。

怒らなきゃ、いいんだけどなぁ~」

と田中が嘆いたように言う。

「ふぅん....幸せそうだな。真純、いい顔してる。

なんか柔らかくなったんじゃないか?

お前と結婚して真純も”らしく”なったのかもな。

結婚も....いいもんだなー。」

と戸田がなんだか羨ましそうにipadを太一に返した。

朝から熱気のあるボーイズトークをしている間に

湯気の立っていたコーヒーはもうすかっり冷めていた。

太一は冷め切ったコーヒーを飲みきり

「そろそろ、行きますか?」

と真純からクリスマスにもらった腕時計を見ながら

二人に促した。

「ああ、あっという間だったな...」

戸田が名残惜しそうに言った。

「これからはまた、ちょくちょく会おうぜ!

娘ちゃん大きくなったら真純も呼んで今度は4人で会おうよ!」

と田中が二人の背中をバンバン叩きながら言った。

「おう、そうだな。」

太一は笑顔でそう答えた。

3人は彼らの人生とダブるようにバラバラに散って

イチョウ舞い散る町並みへ消えていった。

「それにしても、”猛獣使い”とはな...」

自嘲的に太一は空を仰いだ。










(著: 夢澤 日秋)
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Akieem Zawadi
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ARTIST
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散歩 ・小説書・ 涙を流すこと
自己紹介:

海外のファンが多く、色彩感覚と切り取る目線がその人気の鍵。

日々の考えや恋愛、食べ物、読み物、音楽、アートとあらゆることに関してエッセー調に書き綴っている。

夢は、世界中の夕日と朝日を愛する+1と見に行くこと。世界中のあらゆる食べ物を食べ歩くこと。

 

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