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白い祠

むかしむかし、あるところに一人の男が山奥に住んでいた。

その男はかろうじて男と呼べるような見てくれだったので

生まれてすぐに村人は男を獣扱いして山へ捨ててしまったのだった。


男の体は全身に茶色い長い毛がみっしりと生えており

大きく見開かれた目の周りは赤くただれていた。

そして、顎まで裂け渡った口からは胸のところまで長い牙が垂れ下がっていた。


その恐ろしい形相に誰もが男を獣として恐れ、追い払うか殺そうとした。

男はその度に悲しみと怒りで山に響き渡る声で泣き散らすのだった。

それでも男は村人に一切手をだしたりはしなかったが

その薄気味悪い声に村人はその山に近づかないようになってしまった。


しかし、一人の女だけはこの男を獣としてみなかった。

太陽の下、木の実採りに来ていた女は彼を恐れることなく

「こんの茶色い毛~は絹のようにやわらかいんね~」

と言っていつも肩や頭を撫ぜてくれるのだった。

この女が唯一の男の友人であり、心のよんどころでもあった。


ところが、女と男が一緒にいるところを村人に見つかってしまい

無理やり二人は引き離されたばかりか男は半殺しの目にあった。

必死に逃げていつもの湧き水のある大木の寝床までなんとかたどり着き

男は湧き水を飲もうと水面に映った自分の姿をはじめて見た。

ポタリ、ポタリと赤い血が水面に細かな波紋を生んでいた。

男は女と自分の形相が余りに違うこと、なんと恐ろしい姿をしているのかと嘆き

悲しみに声を震わせあたりの草や自分の体毛を当たりかまわず引きちぎった。


そして、自分の心のよんどころであった女までも奪われ

人間らしい生活がもうできないと悟ると男は

自分の死に場所を求めさ迷い歩いた。


どれくらい歩いたろうか。

崖の切り立った岩場が遠くに見えてきた。

男は「ここにしよう」と切り立った崖を目指してふらふらと吸い寄せられるように

岩場へ近づいていった。


すると白く光る祠が見えてきた。

周りは立ち入りを禁ずる綱で包囲されており奥の祠には

美しいあの心のよんどころだった女とそっくりの像がたっていた。

男が祠へ近づくと茶色い体毛がチリチリと焼け焦げ

耳を劈くような高い音で頭がキリキリと痛み出した。


しかし、死を覚悟した男はかまわず走り出すと

包囲された綱を飛び越え祠の像を胸に抱いた。

すると大きな光が彼を突き抜けたかと思うと、

体毛は消えうせ胸まであった牙もぼたぼたと地面に抜け落ちた。

男が恐怖で身を震わせていると後ろで鋭い声がした。


「あんたは一体ここで何してるんか?

 裸でそんなところに突っ立って.....

 恥を知りんしゃい!!」


後ろを恐る恐る振り向くと

間違いなくあの女がそこで顔を赤らめ立ち勇んでいた。

男は今までに一度も言葉を話したことはなかったが

不思議と口をついて言葉が溢れ出てきた。


「わしはずっとこの山に獣として住んでおって.....

 あんたが私のこころの支えだったんに....

 殺されそうになった挙句にもう二度と会えんくなったから..

 死のうと思ってここへきたんじゃが...

 あまりにこの神さんがあんたに似てるもんだから死ぬ前に

 もう一度だけあんたに触れたいと思って....そんで....そんで....」


女は足元に転がる牙を見て男がかの引き離された男だと知ると

涙で顔をしわくちゃにしながら


「わしは....

 わしは....

 ずっと..あんたのこと探してたんよ..

 誰もあんたの心のよいところ知らんから

 何度も...何度も...説得したが.....

 誰も相手にしてくれんで..

 山へ行くのも禁ぜられたが

 唯一..........

 この祠は家で代々守ってきた祠だから

 お参りに来てたんよ....

 毎日、あんたに会わしてくださいって

 神さんにお祈り..してたんよ...」


と消え入るようなかすれた声で、それでも

しっかりと男の目を見つめ言葉を選ぶように話した。


そして、男は女に駆け寄ると互いに抱き合い

もう二度と離れはしない

自分を救った神様を一生涯守ると誓った。


男は自分から抜けた牙で神様を守る像を新たに作り祭り

村人たちはこの話を聞いて彼に今までの行為を詫びて

一緒にこの祠を村をあげて守ることを約束し

二人はいつまでも仲のよい夫婦として幸せに暮らしたのだった。








追伸

この話はいわば、和製「美女と野獣」です。

ちょうど震災が起こる前に映像が浮かび、5分ほどでできました。

最近、駅に張ってある「美女と野獣」のでかいポスターの

こんなキャッチコピーが目に飛び込んできました。


「愛を信ずる心が、奇跡を起こす」


まさにそのとおり。

私にも、この話を読んだみなさんにも

奇跡が起こればいいな.....

なんて思って書いてみました。



今までは昔話風でしたが

今度は小説や詩にもトライしたいと思います。

ではまた!






(著: 夢澤 日秋)
La leo litende leo
akieem zawadi
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Akieem Zawadi
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ARTIST
趣味:
散歩 ・小説書・ 涙を流すこと
自己紹介:

海外のファンが多く、色彩感覚と切り取る目線がその人気の鍵。

日々の考えや恋愛、食べ物、読み物、音楽、アートとあらゆることに関してエッセー調に書き綴っている。

夢は、世界中の夕日と朝日を愛する+1と見に行くこと。世界中のあらゆる食べ物を食べ歩くこと。

 

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