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「これ完全にバベルだよな...」
行き帰りのバスの中でスカイツリーを見ながら私は心の中でそう、呟いていた。


3.11の震災も落ち着いたと思われるGW中に
私は友人たちの住むいわきにそろそろ行こうと考えていた。
自分の仕事の頃合いや友人達にも予定があると思い、誰にも言わずに高速バスへ飛び乗った。

時刻は13:00。

向かう車中で、いわきの友人達にそちらに向かっていると一斉送信をかけた。
GWでかけている友人達の中、「働きマン」のような友人が唯一捕まった。

着いて間もなくは街を散策する。晴れていて暑い。
街の中でも地震の傷跡が残っていて私はそれを写真に納めた。
ホテルを探しチェックインし友人の迎えを待つ。

久しぶりの再開。
お互いに安堵の表情。

久しぶりに会う彼女は髪を切ったばかりのせいか、少し大人びて見えた。
どこにご飯に行こうか...という話になる。

お気に入りの店は軒並み閉店をしているか、避難所になっているかのどちらからしく
行く店が閉まっていて街をぐるぐると回ってようやく大学の頃に通っていた
「じゃがいも家族」へ行こうということになった。

牛丼屋や回転寿しなど、直ぐに食べ終るような店、もしくは、持ち帰りの弁当屋さん
が人気があるらしかった。確かに「すき家」は満車、回転寿しは行列ができている。

「みんな、ゆっくりと食べれられる心境じゃないんだよ。」

淋しそうな顔で彼女はそう言った。

懐かしい道を山の大学の方へと登っていく。
変わってしまった場所、全く変わらない場所。
大学時代の情景がその場所に重なり浮かんでは消える。

お目当ての「じゃがいも家族」へ着いた。
丸太小屋を思わせる風貌に家庭的な温かさ、そしてしっとりとした喫茶店の要素もプラスされた
ほっこりと落ち着く店内は若者や家族連れで満席となっていた。
店員に車のナンバーを告げ、車内で待つ事に。

彼女の恋愛話になる。

いつもチャキチャキとした彼女の横顔が時より恋に悩める乙女の顔になる。
いつも誰よりも人を優先させる彼女が恋をしている事が何より嬉しかった。
「人を最優先にしすぎなんだよ。」の私の言葉に
「そーなの!」と興奮する彼女。

そうこうするうちに30分は待っただろうか。
店内へ向かいようやくお目当ての食事にあり着く。
ポテトがメインで野菜も盛りだくさん、ガーリックの効いたチキンの唐揚げでおなかはパンパンに。

仕事上の立場や様々なしがらみ。
彼女の仕事のセンスはピカ一なのを知っているから私から出る言葉は
「もったいない東京へおいでよ。」の言葉ばかり。

彼女は言う。

「誰も私のことを知らないところにいって...京都のパフェ屋で時給¥850で働くよ。」

もしそうなったとしても、メキメキ頭角を表すに違いない事も、
それが彼女にとって幻想だということも私には分かっていた。

続けて言う。

「少し、この前泣き言こぼしたら”めずらしーね”って言うんだよ〜?
 そんなに元気に見えてんのかなー?私だって折れるときあるんだよ〜」

いわきの女は明るくて強い。

でも、今ここに居る彼女は逃げたくても逃げられない宿命のようなものを背負っていて
だからこそ自分勝手な判断では動く事ができないのだ。

以前、別な友人からのメールでも「心が折れそうだ..」と書かれていた。
またいつもコメントを載せているyoriも電話口でGWでかけたくない、
そんな気分じゃないって語っていた。

いつも元気で気丈な彼女達をここまで追いつめたあの震災。
私の目的は彼女達の目の当たりにした真実を自分の目で確かめに行く事でもあった。
次の日、いわきの海、津波の爪痕を見に行く事を友人に告げた。

「見なきゃよかったって思うよ。東京の友人もそう言ってたし....
 目に焼き付けない方がいいよ.....でも、あきちゃんの性格なら見ておいた方がいいかもね。
 へんな肺炎も流行っているからマスク絶対つけてね!」

他にも、野次馬に職務質問する警官などにも注意するように言われる。
本当に名残惜しくて、時間が足りなかった。
私は車を降りて、大きく手を振って車が小さくなるまで手を降り続けた。

私はホテルの部屋へ帰ると、大浴場へ向かい一人貸し切り気分で大浴場を満喫する。
泳いでみたり、口まで湯船に浸かりブクブクと泡を吐いてみる。
意味もない事をしながら明日はバスで向かおうかタクシーで向かおうか悩んでいた。
そうこうするうちに、一人入ってきたので入れ違いに上がり部屋へ戻る。

明日の事を考えると、なんとなく不安がよぎるが「hot spot」のオーストラリアの
赤カンガルーを見ているうちに瞼が重くなりそしていつの間にか眠りに就いていた。


   * * * *


翌朝、朝食を外で取る事に決めていた。
大学時代によく行っていた「BREAK」という喫茶店だ。

外に出ると驚くほど肌寒く、小雨もぱらついている。
ボランティアをする考えもあったが、自分の体力を考え選択枝から消した。

足早に昨日友人から教えてもらった道を行くとシャッターが閉まっている店の中
唯一8:00台に店を開けていた。店内に入ると珈琲のいい香りと爽やかなボサノバが流れてきた。

オーダーは決まっていて名物のホットサンドをオーダーする。
厚切りパンの間にはクリーミーな卵焼き、トマト、お行儀よく並べられたキュウリと
ボリュームのある一品なのだ。

運ばれてきたホットサンドにかぶりつき、ミルクティーで流し込む。

「あぁ...懐かしい味。」

10年前と全く変わらない味がして、とてつもなく懐かしい思いがこみ上げてくる。
変わらないものは変わらないのだ、と改めて思いつつ、変わらない努力がそこにある事にも
強く敬意を評したい気分になった。

私が食べ終わる頃、ぞくぞくとお客が入ってきた。人気の店なのが伺える。
数人のおじさまは珈琲だけを純粋に頼んでいるようだ。

私は店を出る際に、大学を卒業して10年ぶりにこの店を訪れた事を伝えると
胸が一杯になりなぜか泣きそうになってしまった。
「また、おいで下さいね。」の一言に
「また、来ます。」と伝えると店を後にした。

ホテルに戻るとチェックアウトまでの時間がなんだか長く感じウトウトとし始める。

10:03。

チェックアウトしバス乗り場まで行き路線図と睨めっこ。
そうこうするうちにバスが行ってしまった。
バスが立ち去った後奥に目をやるとタクシー乗り場におじさん達がたむろしているのが見えた。
迷わずそこへ行き、一番先頭のタクシーへと乗り込む。

「塩屋崎灯台まで。」

昨日、友人から特に被害のひどい場所をいくつか聞いたがそこしか思い出せなかった。

「塩屋崎灯台で...そこにホテルとかお泊まりなんですか?」

特に被害が酷い地域に女性が単独で行く事に違和感のある口ぶりだった。

私は友人に会いにきたついでに自分の思い出の地がどうなってしまったのか
自分の目で確かめに来た事を洗いざらい話をして、そして、よければ塩屋崎以外の被害の
大きい地域も回って欲しいと頼んだ。

運転手のおじさんは快諾した後こう続けた。

「あんまり...目に焼き付けない方がいいと思いますよ....」

昨日友人からも、そうアドバイスされていた。
少しきれいになっているから大丈夫だろうけどひどい有様だとのこと。

海に向かう車中、地震津波は海底を這ってくるのでヘドロを巻き上げて押し寄せてくる事、
1000年に一度の大地震が核家族によって後世まで受け継がれなかった事、
スパリゾートハワイアンズの真下にある活断層が動いた事、
などを時に両手を離し後ろを向きながら声高に話す
運転手のおじさんにドキドキしながら海へ向かう。

海へ近くなり見覚えのある防砂林が見えてきた。
紅葉の季節でもないのに、葉が茶色く変色している樹々が中に混じっているのが見えた。

「あれは、塩にやられちゃったんですよ。」

そのすぐ後ろにオレンジ色の老人施設が見える。

「あそこは無事だったんですけどね、あの防砂林がなかったら駄目だったでしょうね。」

見覚えのある海岸へ行くとゴミの山も一緒に目に飛び込んできた。
冷蔵庫やその他、使い物にならなくなった電化製品の数々。
車を降りて説明してもらう。

「あそこの海岸はなくなってしまって、こっちに砂が流れてきたんです。」

防波堤とゴミの山の逆側の家は波にぶち抜かれていて、中ががらんどうになっているのが見えた。
しかし、それは序の口な方だった。

海岸線からいったん山へと入ったかと思うと突如、田んぼにいくつもの瓦礫の山が見えてきた。
私が一番怖い、と感じた瞬間だった。そこは、一番被害の大きい地区への入り口であった。

「この田んぼは塩を含んで使い物になりません。」

山と田んぼを抜けると家があったであろう土台部分しかないような広い場所に抜けた。
山が岩肌になり、そこが入り江になっているような地形で横に流れてきた波が
岩肌を伝って一気に上に流れて行った事を説明される。

「ここはみんな家だったんです。」
「信用金庫もみんな流されてなくなってしまいました。」

少なすぎるボランティアと片付けにきている避難住民がのがポツリポツリといるのが見える。
1/4くらいに圧縮された車や壊れて流されたピアノ、くまのプーさんのぬいぐるみなんかが
木造の瓦礫の下からはみ出ているのが見える。

「ひどい.....酷すぎる...」

もはや言葉が出てこない。
厚さ1m以上あろうコンクリートの防波堤がいとも簡単に粉々になっている。
波の形に家々が壊れているとことさへあってその爪後が手に取るように分かった。

半壊、全壊している家々を見ているうちにオレンジ色の張り紙が貼ってあるのに気付いた。
家主であろう人の名前と連絡先があるのだ。
聞いてみると家を行政が倒潰するには家主の許可が必要だとのこと。
建てたばかりと思われる家にもその紙が貼ってあるのを見て悲しい気分になった。

小学校、中学校、高校もその中にあって避難勧告に従ったかどうかで明暗が別れた事なども
話してもらった。中学生や高校生の地元ボランテティアの姿もちらほら見られた。

造船所、大きな船が積み重なり、ひっくり返り、とんでもない所に置き去りになっている
姿を見てため息しか出てこない。
そして、あまりの瓦礫の量にふと疑問がわいてきた。

「この瓦礫ってもしかして震災から手つかずなのですか?」

そう、尋ねるとすぐこんな回答が帰ってきた。

「そうなんだよ。行政が小名浜はたいしたことないって言っちゃったもんだから
 まったくその時のまんまなんだよ。遺体も瓦礫の下にいるかもしれないから下手に素人が
 手をつけられないんだよ。」

私はその言葉を聞いて絶句してしまった。
と同時にどうりで、自衛隊がまったくいないのも納得がいった。
そして、あの瓦礫の量を考えると気が遠くなるようなめまいすら感じずにはいられなかった。

海岸線をひた走りながら水平線を眺める運転手のおじさんがこう言った。

「今年は...海水浴も駄目でしょうね。」

いわきは知っての通り、原発の影響で震災の被害に加え風評被害にもあっている。
いわき市は東京23区が2個入るほど広い地域で20km県内に含まれる地域は極僅か。
私が回った磯先や豊間なんかも原発からは40〜50km離れた所にあたる。
そして人々は今もなおそこに住み続けている。

であるにも関わらず、避難してきたいわき市民に「ウツル」という心ない言葉を
浴びせかけるような被害に合っているのだ。

仮に被爆していたとしても、それが他人に何か感染する事などないのは周知の事実である。
しかしながら友人も運転手のおじさんも

「会社にはここへ来た事は言わない方がいいでしょうね。」

と口を揃えて言っていた。
もし、そのような差別的な事があるのだとしたら本当に同じ人間としてこれほど悲しい事はないし
明日は我が身ではないのですか?と差別する側の人間に問いただしたい気分にすらなる。
今もなお戦っている東電の社員やこの街に住む人々の事を考えると深い悲しみの淵を
彷徨うしかないのだろうか...という気分にならざるを得ない。

がしかし、今回被害の状況を見て涙は一滴も流れてこなかった。
むしろ、泣いたり、悲観的になっている場合ではなくて、全ての問題を
慎重かつ丁寧に、それでいて、迅速に事を進めなくてはいけないのだと強く感じた。

特に、急務は「仕事をどうするか」という事で、友人も運転手さんも同じような事を言っていた。
今はここに残って仕事をするが、避難した先でもし仕事を探すとなったらいったいどうすれば
いいのだろう...ということだった。

100万人単位の人員が避難しなければいけない状況になったとき、果たして受け入れ先
の市町村地区はどれくらいあって、どれくらいの雇用が可能なのか。
また、雇用がその人にマッチングするかどうかの問題もある。

漁師から漁を奪った海は今は気持ちよく凪いでいる。
海の色や波の立ち方で漁に出るのを決めるという漁師達。

私にできる事を深く深く考えさせられた今回は貴重な旅であった。
震災復興に対してのライブペインティングの活動。
今はまだ封印しておこうと決めた。

私が今回したかったのは、震災を受けた方々のテンションと同化する事。
私の熱意が強すぎてはいけないし、相手の速度に合わせたい。
もし、するのならごくごく個人的に広げて行こうと思う。
ただし、活動の場があるのであれば、必要とされるならば、
勇んでそこへ向かうつもりである。

ちっぽけな存在の私を最大限に生かしたいと思うから。
最後に、運転手のおじさんの言葉でこの日記を締めくくりたいと思う。


「人間がいくらすごいだろうって支配したつもりでいても、
 ひとつも支配できるものなどないんだよ。」


だから、私たちにバベルなどあってはいけないのだ。









La leo litende leo
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ゆっくりしてね

  • posted at:2011-05-08 03:25
  • written by:AYUMI
じっくりとよんじゃった。
生の体験というものはすごいね。


私は正直被災地にいく勇気はないけれど…
でも自分がいる場所がいつ被災地になるかはわからないし、
今、私でもできることをこつこつやろうと思っているよ。

疲れたと思うから、ゆっくりしてね。

ありがとうゆっくりするね

  • posted at:2011-05-10 07:37
  • written by:akieem
うん。
今になって頭痛という形で
疲労が出てきちゃたから
ゆっくりするね。
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Akieem Zawadi
性別:
非公開
職業:
ARTIST
趣味:
散歩 ・小説書・ 涙を流すこと
自己紹介:

海外のファンが多く、色彩感覚と切り取る目線がその人気の鍵。

日々の考えや恋愛、食べ物、読み物、音楽、アートとあらゆることに関してエッセー調に書き綴っている。

夢は、世界中の夕日と朝日を愛する+1と見に行くこと。世界中のあらゆる食べ物を食べ歩くこと。

 

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